2016年4月20日水曜日

姫新線に乗る


平日だったが、年度末の休日出勤の代休があったので、行ってみたいとかねてより思っていた姫新線に乗りに出掛けた。姫新線とは兵庫県姫路市から岡山県新見市間を走っているJR西日本の地方路線である。
朝5時半に部屋を出て、始発駅の姫路駅に向かう。

7時前の姫路発播磨新宮行きには、学生やリーマンが結構乗っており、二両編成の車内は立っている乗客も多かった。
列車は姫路市の住宅地を抜けて、少しずつ中国山地の中に入っていく。

次々と乗客が入れ替わっていく。
沿線地区は学校や住民が多いようだ。
イメージしてたより、遥かに賑やかな車内だった。
学生がこんなに早い時間から通学しているのかと感心もした。いつもなら私はまだベットの中にいる時間だからだ。
半時間で終点の播磨新宮駅に着いた。大方の学生やリーマンはここで降りて行った。私は隣のホームで待ち合わせている佐用行きに乗り込んだ。

ここからは男子高校生が多く、空席も目立つ。
いよいよローカル線のそれらしい雰囲気になってきた。
車窓からは住宅が少なくなり、なだらかな山々の新緑が多くなってきた。
また、八重桜が所々に咲いている。丁度、満開になっている木も多い。
低い角度の朝陽に照らされた美しい春の風景が眼前に映し出される。

1時間ほどで佐用駅に着いた。
ここでも連絡する列車は既に停まっていた。
今度の行先は津山駅である。
この列車には初めは五人しか乗客は乗っていなかった。
1両編成の列車は、ちょっと他所では見ないような狭い谷沿いをゆっくり進んでいく。狭い処に水田や家が点在している。如何にも中国地方の山里という感じの場所を縫うように軌道が敷かれているのだ。
佐用駅から数駅の間がこの路線の核心部であった。
たまに線路脇の小枝が窓に当たるのを聞きつつ、これだから乗り鉄は止められないとしみじみと感じていた。
自動車で走るとどうしても自分で進行方向を決めざるを得ないが、列車は線路任せだ。それがほどよい目眩にも似た感覚を生む。
また、高架部分では真下の地面や川の中まで見える。
ドローンのように飛んで見ているように風景が一望できるのだ。

終点の津山駅の2つ手前の駅から老人会の団体客が乗ってきて、満員になったので興趣が薄れたが、かなり乗り鉄を満喫した1時間だった。

津山駅から姫新線の終点新見駅への連絡列車の待ち時間は30分ほどあった。
この区間も最初の乗客は五人から始まって、終点では私を含めて二人しか乗っていなかった。
もう一人は明らかに鉄道マニアの三十代の男だった。

姫新線は初めの区間こそ、それなりに人は乗っていたが、やはり奥に行くほど不採算路線であるというのが、実感としてよく分かった。さらにド・ローカル線のお決まりとして、二時間に一本のダイヤ編成だ。

新見駅に着くと正午に近く、グーグルマップで食堂を探すと、近所に名物エビメシというのを見つけたので行ってみた。
駅から歩いて十分ほどのスーパーの中にある喫茶店みたいな店だった。
昼前にしてはよくお客は入っていた。
大方の人が食べているエビメシを注文した。
出てきたのは見た目、ドライカレーの上にシバエビの剥き身を載せたようなものだった。しかし、食べてみると仄かにカレー風味ではあるものの、どちらかと言うとドライのハヤシライスみたいなものだった。

不味くはないが、これならドライカレーでいいなと思った。
味付けは本格的な洋食屋だったので、何を食っても外れは無さそうだった。

午後1時前に新見駅に戻り、これからどうするか悩んだ末、米子経由で帰ることにした。時間的にもいい頃合いだった。
偶然、先程の鉄オタも戻ってきており、彼は私より先に出発する備後落合行きの列車に乗った。
時刻表を確認するとその路線は1日に5本ほどしか運行していない高難易度路線だった。何故か派手に負けた気がした。
終点の先には木次線がある。
乗り鉄の師匠(同僚)から、ここは厳しいとかつて聞かされたことがあった。
いつの日にかまた、ここを制覇するために戻って来なければなるまい。

帰りの特急からも同じような山里の風景を見た。しかし、風景を見るなら朝方に限る。帰ることが脳裏にあると本心から楽しめないものだ。
ただ、夕陽を浴びたお地蔵様は強く郷愁を誘われる絵であった。

新大阪駅に着くと午後8時だった。
久しぶりの乗り鉄は体に堪えた。

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